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本に登場した魅力的な探偵

子どもの頃、私は読書が大好きでした。誰もが知っている有名な探偵シリーズは片っ端から読み漁りました。

昔、子供だった私は自他ともに認める「本の虫」でした。
外で走り回って遊ぶよりも、家の中で大好きな本をゆっくり読んでいる方が100倍幸せでした。

そんな毎日でしたから、いつも本のストーリーの続きを妄想する。
一人で笑っていることもあり、周りから見たらかなり不思議な女の子だったかもしれません。
特に、某有名探偵が登場するシリーズが大変好きで、片っ端から読み漁っていたことを思い出します。
探偵には、何かこう独特のミステリアスな雰囲気があります。
そして、頭が良くて優しい。
それはきっと、作者がそんな魅力的な登場人物を考えてくれたからだと思います。
このような理由もあって、昔一時だけ私も探偵になりたいなと思ったことがありました。
もちろんその夢は夢で終わってしまったのですが(笑)。
実際の探偵はどんな仕事をしているか私には分かりません。
本の中に登場するような、奇怪な難事件だけを解決しているわけではないでしょう。
今まで身近に感じたことも接したこともありませんでしたので、考えてもやはり私には分かりません。

探偵のイメージ

私がイメージする探偵は、人を寄せ付けない硬派な男性。
凛としていて、それでいて人情味あふれていて。
相談者の悲しみや辛さもよく理解できているようなそんなイメージです。
今後、私が探偵に何かお願いする日がやって来るとは今のところは思っていませんが、未来は分かりませんからもしかしたらあるかもしれません。
その時は、昔私が本で出会ったような魅力的な探偵さんなら良いななんて、またしても妄想していたりします(笑)。

探偵からの報告に仰天する

探偵からの報告に僕はうちのめされた。
報告の冒頭にはお気の毒ですが、と枕詞すら添えられた。

浮気してるんですか?こう聞くと、探偵はなんとも形容しがたい表情を浮かべた。指定された喫茶店に客は少なかった。なんとも古びた外観どおりの古びた内装。
ドラマで出てきそうな昔ながらの喫茶店、といったところだろうか。

ストーキングされてますよ。タバコをふかしながら探偵は言った。
ストーカーですか?
ええ、間違いないですね。依頼主はまだ確定してませんが、ご希望なら調べられますよ。
僕の動揺など気にも留めず、薄情そうな痩せぎすのその探偵は続けた。
やたらと目つきが鋭い男だ。暗い店内で男の目が異様に光る。
危ないんじゃないかな?ふたりとも。
ええっ?
嫉妬に狂った男は見境ないんですよ。普段は穏やかな紳士が一転して化けてしまう。思いもよらない事件へと発展することだってありますしね。
おそらくこれだけのお金をかけられる依頼者ってことはけっこう年配の男じゃないのかな。会社経営者とか。そういう話は彼女から聞いたことないですか?
ふうっと男が吐きだしたタバコの煙が白い筋を描く。
ないですね。と何故か僕は小さくなって答えた。
まあ、彼女はちょっとやめた方がいいんじゃないかな。同年代の人間としてアドバイスしますが。
ええっと僕は探偵をテーブル越しに凝視した。
大人しそうに見えて、けっこうな人なんじゃないかな。いや、失礼。なんていうかこう……突拍子もない行動をしそうなタイプってことですよ。
我々探偵家業をしていると、いろんなタイプの人をたくさん見ますからね。見れば分かるんですよ。彼女はどうしてなかなか油断ならない人ですよ。
だからストーカーにまで遭ってしまうんですよ。まああなたと彼女が無事結婚したとしますよ。もし彼女が浮気したらどうするんです?やりかねませんよ。あの人なら。
僕はことばに詰まった。