彼女から唐突にメールがきた。
僕を会社近くの本屋や駅で待ち伏せしたことなどが事細かに書いてある。
会ってほしいと言ってこないところに相手の真意が測りかねる。
メールのどの文面も、正直訳が分からない。
会社や周囲への憤慨をぶちまけてるのか、僕からの失恋に酔っているのか。
それとも実は思っていたよりも僕を好きだったと告白しているのか。
彼女は何度も書いている。
人間としてあなたが好きです。
仕事上で尊敬する人です。
ありがたい反面、こちらの気持ちを全く理解していないのに驚かされた。
「自信がないのです」とも必ず同時に書き添えてある。
どうしたいのか自分でも散らかっているらしい。
あの日派遣期間が終了し、彼女は会社からいなくなった。
なんか寂しくなったねと課長が僕にそっとつぶやく。
課長はいい人だ。
よくいるあみだくじハゲの人で、ユニークなそのルックスを見て彼女はどうしても笑ってしまう。
僕の上司を見て笑うとは。
こらえきれずにときどき爆笑。
羨ましいくらいの精神構造の持ち主だ。
その彼女も職場からいなくなった。
どこを見ても何時になっても姿はない。
羨ましいくらいに散かり放題の机も、今となっては懐かしい。
思えば、僕もああいう風に振る舞ってみたかったのかもしれない。
笑いたいときに笑い、泣きたいときに泣き、簡単にブチ切れる。
自制心を学ぼうと思いますと彼女は言い、あなたを見習いたいとも言っている。
そうかそれは人によってはそんなに難しかったかと気づき、課題と掲げる彼女を失いたくないと強く思った。
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